社会的養護とは保護者がいない児童や擁護者に監護させることが適当ではない児童を公的責任で社会的に養育し保護するとともに養育に大きな困難を抱える家庭への支援を行うことを指します。児童養護施設や里親、ファミリーホームや乳児院、児童自立支援施設などがあり、自立援助ホームもその一つです。

 

自立援助ホームとは、なんらかの理由で家庭にいられなくなり、働かざるを得なくなった原則として15歳から20歳まで(状況によって22歳まで)の子どもたちに暮らしの場を与える施設です。生き生きと生活できる場、安心して生活できる場を提供し、大人との信頼関係を通して社会で生き抜く力を身に付け、子どもたちが経済的にも精神的にも自立できるように援助する事を目的としています。(全国自立援助ホーム協議会HPより)

 

「みどりヶ丘」は運営法人である「NPO法人山形の社会的養護を考える会」の佐久間美智雄氏が中心となって勉強会をかさね、開所された山形県内初の自立援助ホームです。定員は6名で、現在は16~19歳の男女4名が生活をしています。

 

ホーム長である志鎌さんと職員の沓澤さんにお話しを伺いました。
(二人の話を要約して記載しています。)

Q NPO法人を立ち上げて自立援助ホームを開所するきっかけを教えて下さい。

 

A. 社会に出てから必要になるスキル、たとえば税金のこととか社会保険とか、金銭感覚なんかもそうですね。養護施設だけでは補完できないスキルを磨くには実際に経験し、その経験から学ぶことが必要です。経験の場を提供するための施設を立ち上げたいと想いが児童養護施設に山形県から配置されていた自立サポート相談員の中で生まれ、そのための勉強会を重ね、8年前に当時全国で125番目に開所したのがこのホームです。県内ではまだ1箇所ですが、全国では265箇所まで増加していて、サポートの手は着実に広がっています。 

 

Q どのようなサポートを行っているのですか?

 

A 8年間で14名の子どもたちを受け入れてきましたが、貧困や虐待など、ひとりひとり抱えている背景が違います。そのため、その子に合った指導方針を立て、1つ1つ課題をクリアしながら、それでも一筋縄とはいかず難しいこともあるので「もう少し頑張ってみるか」と声を掛け、子どもたちに寄り添うサポートをしています。実際、失敗してもここにいるかぎり、見守ってくれる人がいるので生活はしていけます。でも、本当に大変なのは自立した後の生活です。だからこそ、自立後の生活を見守ることがとても大切で、職員が中心となってまめに連絡を取り合い、相談があれば話を聞いています。こちらから絶対に縁を切らないことがとても重要なことだと思います。

本来、子どもは両親の庇護のもと様々な経験を積み重ねて社会人になっていくものですが、ここにいる子どもたちは大人になることを強いられた子どもたちです。だから、経験不足なんです。だから経験する場をいかに提供してあげるのかが重要で、場面場面で経験しながら学んでいけることが自立援助ホームの利点だと思います。

 

Q 様々な問題を抱えた子どもたちと接する上で大切にしていることは?

 

A 生きる上で人から必要とされることはとても大切なことです。一番不安になるのが居場所がないこと、自分の心の置き場がないことだと思います。どんな些細なことでもしてくれたことには「すごいね」とか「ありがとう」とか感情表現を周りの大人がしてあげる、そのひとつひとつの積み重ねがその子の自己肯定感へと繋がっていくのかなと思います。思ったことはちゃんと伝える、そこは職員として大切にしていることです。

そして、できればホームにいる間に資格のひとつでも持たせてやりたいと思っています。何かをするときに履歴書に書けるものが1個でも2個でもあればその子の自信にも繋がります。生活の中から子どもたちの長所を知り、長所を伸ばして資格や学びへ結びつけることがこのホームでは可能なんだということを働いていて感じました。最後は本人のやる気次第ですが、それでもこちらの一言で本人が気づくこともありますからね。

その子のためではなく、その子と一緒に寄り添ってやっていくことが一番大切なことだと思います。「for」ではなく「with」。寄り添うってなかなか出来る事ではないですが、一緒になって考える、その中から答えが見いだせればいいかなとは思っています。

 

Q 今後必要となってくることはありますか?

 

A 全国的に自立援助ホームの利用者が抱える問題は複雑化していて、自分たちがどう支援していけばいいのか、職員も勉強が必要ですし、多角的に支援していくためには様々なサポート支援を行っている専門家や支援団体と繋がっていかないといけないですね。そのためにも自分たちの活動を広く知ってもらうことが必要だと思っています。まず、スタートとして今年は各市町村の子ども支援家庭課との連携を深めていきたいです。

 

Q 最後にメッセージをお願いします。

 

A 親がした過ちを赦すこと、それは簡単なことでありません。それでも、時間をかけて、経験を積みかさねていけば、きっと親の過ちを受け入れるそんな時期がくるはずです。親が変わることは難しいですが、子どもは無限の可能性をもっていて、親を理解できるぐらい成長できるかもしれない。だからその可能性を伸ばしたい。そして、いつか家庭の再構築を目指してほしい。このホームがその一助になってくれればと思います。

そして、このホームを利用するには子どもさん自身がここを利用したいと思う気持ちが必要です。ホームを利用できるお子さんであっても、他人の中で気を遣って生活するぐらいなら、親に使われたとしても家にいる方が楽だと思ってしまう子もいます。無理強いをするのではなくこんなところもあるよって覚えてもらって、いつか思い出してくれればいいと思います。だからこそ、いつでも気軽に相談できるよう、ホームの敷居は低くありたいですね。

 

志鎌さん、沓澤さん質問にお答えいだだき、ありがとうございました。
話を伺って感じたことは、このホームが自立していった子どもたちにとって心の拠り所になっていることです。私自身、養護施設というとルールや規則を強いるものという固定概念がありましたが、「みどりケ丘」ではあくまで自主性を尊重し、体験の中から自身で学びとることに重点が置かれています。そして、気兼ねなく相談できる相手がいることの心強さは何物にも代えがたいものです。多くの方に活動を知っていただき、このような施設があることを認知してほしいと思います。

 

お問合せ先
NPO法人 山形の社会的養護を考える会
〒990-2305 山形市蔵王半郷松尾川2338-1
℡:023-674-9411