~地域住民によるデマンド型乗合タクシーの運行~
大郷明治交通サービス運営協議会

山形市の明治地区と大郷地区の一部を走っている「スマイルグリーン号」は、公共交通網の無いこの地域で、交通弱者の足を確保すべく運行しているデマンド型乗合タクシーです。行政主体ではなく住民主体で運行しているのは山形県内でもこのスマイルグリーン号だけで、今年で7年目を迎えました。

現在は週3日、それぞれ計9便を運行しており、停留所の数は地域住民からの要望を受けて、地区内外に51箇所が設定されています。

(明治・大郷地区を走るデマンド型乗合タクシー「スマイルグリーン号」)

 今回、会長の東海林一男さんと事務局長の秋葉康雄さんに、スマイルグリーン号を運行することによって成し得た成果と、そこから見えてきた課題、そして、今後の抱負についてお聞きしてきました。

(写真左:秋葉さん、写真右:東海林さん)

かつてこの明治・大郷地区には、天童市まで続く路線バスが走っていました。高度経済成長期の頃はにぎわいがあり増便も出た程でしたが、マイカー率の増加などから次第に利用者が減少し、1999年3月に路線バスが廃止となりました。その一方で住民の高齢化が進み、買い物や通院ができないといったことが大きな課題となりました。

この問題を自分たちで解決しようと、先行事例の視察や住民へのニーズ調査をしながら考えていたそうです。そして、やまがた福祉移動サービスネットワーク(以下、移動ネット)と、福島大学の吉田樹先生に巡り会ってから順調に検討が進みました。その結果、デマンドタクシーの方法が良いのではないか、とのことで、2009年4月から1年間の実証運行を実施し、この間に出てきた反省点を加味して、2010年4月に週2日で本運行を始めました。

成果として、運行を開始してから3年目には延べ利用者数5千人を達成、6年目には1万人を達成しました。そして今年10月には中山町に延伸することになり、これにより週3日の運行が可能になりました。デマンドタクシーが二つの行政区の垣根を越え、尚且つ、その運行が住民主体によるものであることは、全国的にも大変稀なことだそうです。

(中山町延伸の記念式典の様子)

そしてスマイルグリーン号は、地域コミュニティと地元の小学校との新たなつながりも生み出しました。乗車回数券の裏面に描かれているデザインは明治小学校2年生によるもので、描いてもらったものを毎年コンペ方式で、協議会の運営委員の方々をはじめとした約30名による投票で決めているのだそうです。車体の車両標示も、運行開始当時4年生だった小学生が描いたもので、今もそのデザインのまま走り続けています。小学校の社会科見学にも活用されており、利用方法は地域住民と同じで、乗車定員の9名を超える時は増便を出して対応しているとのことです。

(明治小学校2年生によるデザイン画の数々)

また、課題として、利用者の帰りの時間を合わせるのが難しいことや、冬季間の中高生の通学、他交通機関のダイヤとの組み合わせなど、運行を通して新たな課題も見えて来ているそうです。しかし、秋葉さんは「ここまで来たんだから次のステップをどうすると、絶えず前向きな姿勢をしていかないと」とおっしゃって、次の様に話してくれました。
「自分たちでできるところは自分たちでやって、どうしてもできないところは行政に助けてもらい、助言をしてもらいながら、基本は使う人が使いやすいようにして行くのがこのバスだと思っている。検討は尽きないのだが、まず走らせるのが先だべ。課題は出てきたら解決していくべと。」

取材の最後にお二人は、
「地域の足としてのスマイルグリーン号を多くの方々に利用して頂き、より身近な“おらだ”のバスに誇りを持って、沿線の方々に親しまれて利用してもらいたい。また、今後も利用者の立場に立って、改善できるところは改善し、多くの意見に耳を傾けながら、利用者の輪を広げて行きたい。みんなで利用してスマイルグリーン号の継続を図って行きたい。」
と話してくれました。

■大郷明治交通サービス運営協議会
問い合わせ先 電話023-684-7333(明治コミュニティセンター内)

●用語解説

・デマンド型乗合タクシー:
移動サービスが必要な人を自宅や指定場所から目的地まで、乗り合いタクシー方式で送迎するサービスのこと。

(取材・文責:花屋)