9月10日(日)クリニカルアートやまがた主催の「臨床美術を気軽に体験してみませんか? 透かし窓に描く 月光にススキ」が東北芸術 工科大学を会場に開催されましたので、その様子を取材に行ってきました。

参加者は小学生の男の子を含め24名。大人はすべて女性で多くの人が高齢者と思われる方々でしたが、クリニカルアートやまがたの安達さんに伺ったところ、「男性の参加もあるけれど今回はたまたま女性だけ」とのことでした。認知症の病状改善を目的に開発されたクリニカルアート(臨床美術)と聞いていましたので、当事者や認知症のケアに携わっ
ている人たちが参加されるのかなと思っていましたが、そうではなく純粋にアートを楽しみたいと思われている方が参加されているようでした。

まずは、今日の先生を務めるクリカルアートのスタッフから月夜に関する俳句の紹介。「透かし窓に描く月光にススキ」のイメージを膨らませるための紹介ですが、ウロコ雲やイワシ雲、虫の声やキンモクセイの香りなど、思い思いに想像を膨らませ自分なりの月光のイメージを作ってくださいとのアドバイスです。会場にはススキが飾られ、月光にススキが映える景色を思い浮かべやすい雰囲気になっています。
参加者に、丸く穴の開いたキャンパスとして使う台紙と様々な材料が配られ、他にはない自分だけのアート作りが始まりました。迷うことなく作品作りを始められる参加者の方もいらっしゃいますが、戸惑いながら作業する方がほとんどのようです。クリニカルアートやまがたのスタッフが、参加者の表情や所作を見てやさしく声をかけていきます。
6つのグループに分かれていますが、全てのグループで、参加者同士が助け合ったり相談しあったりで会場は一気ににぎやかになりました。このような様子を見ていると、「年齢や障害を越えた深いコミュニケーションが実現できる」とチラシで紹介されていましたが、なるほどと思えました。
参加者の方に「ご自分の作品に点数をつけるとしたら何点ですか?」と聞いてみたところ「初めてやってみましたがとても楽しい。点数はつけられない」と、とても素敵な笑顔で答えてくださいました。


雲やススキの配置や色使いに迷い長い時間スタッフと話し込みじっくり作品作りに取り組んでいる方、自分のイメージのままにどんどん作品を仕上げていく方など様々ですが、参加された方の表情はとてもにこやかで楽しそうでした小学生の男の子もお母さんと楽しそうに話をしながら作っていましたが、ちょっと失敗したようでがっかりした表情をしていました。それを見たスタッフが、男の子がどうしたかったのかをやさしく聞き出して見事にリカバリー。男の子に笑顔が戻りました。

最後に、出来上がった作品を参加者全員で観賞。今日の先生が、それぞれの作品の良いところをコメントしていきます。他の人の作品のコメントを聞いてうんうんと頷き、自分の作品の時はちょっと照れたような表情を浮かべたり、会場はとてもやさしい雰囲気に包まれた気がしました改めて作品を見て感じたのが、切る・貼る・塗るといった簡単な動作の繰り返しでありながら、結構頭を使うのではないかなということです。安達さんにそのことを話してみたところ「そこが狙いなんです」という答えが、きらきらとした笑顔とともに返ってきました。専門的な技術は使わないけれども、たくさん頭を使うようなプログラムを準備して行うクリニカルアート、是非皆さんも体験してみてください。今回取材にご協力いただきましたクリニカルアートやまがたの皆さん、ありがとうございました。

クリニカルアートやまがたのホームページで活動の様子などを見ることができます。興味のある方は一度ホームページを覗いてみてください。
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