令和7年8月20日(水)に、初の試みとなる「哲学の小部屋」を開催しました。
これはいつもの哲学カフェのような身近な問題をテーマとして話し合うというものではなく、「思考実験」といわれる哲学的な問いをいくつか、参加者で話し合うという形式の講座です。
そもそも「思考実験」とは、頭の中で特定の状況や条件を想定し、その結果を推論する思考方法をいいます。内容としては普段の生活では絶対にあり得ない状況が多く、そんな中で迫られる選択によって、自分の思考の傾向や普段は意識しなかった自分の考えなどを改めて知るきっかけになる、思考トレーニングのようなものです。
参加者にはA、Bと書かれたボードを用意し、どちらの回答を選んだか表示してもらいます。そのうえでA、Bどちらを選んだのか、その理由も含めて順番に発表して、それを元に議論をすすめました。
まずは有名な「テセウスの船」という問いから始めました。
かつて英雄テセウスが乗った船、その業績をたたえるために保存することになりました。しかし長い年月とともに少しずつ朽ちていき、その都度新しい部材と交換していったところ、いつしかすべての部材が新しいものと交換されました。(これをAとします。)
取り替えた古い部材も、ぼろぼろでもはや船としての機能は失われているものの、記念として船の形に組み上げられました。(これをBとします。)
そのようにして最終的にA、B2隻の「テセウスの船」が出来上がります。
さて、あなたはA、Bどちらがオリジナルの「テセウスの船」だと思いますか?
みなさん悩んだ末にA、Bどちらかを選んでもらいましたが、その理由は人それぞれ違っていて、なかにはなるほどと感心させられるものも多くありました。
例えばこれを音楽バンドに置き換えた場合、当初のメンバーが次第に脱退し、その都度新たなメンバーが加入していって最終的に初期メンバーはすべて入れ替わったとしても、そのバンドはオリジナルといえる。だからAがオリジナルであるという答え。
例えばこれをお城などの歴史的な建築物と考えた場合、まさに歴史の舞台であり、歴史上の人物がそこにいたからこそ価値があるけれど、新たに建設された城には観光地的な価値以外はなにもない。だからBがオリジナルという答え。
どちらもなるほどと思える回答で、どちらが正しいとは決められない内容です。
このような問題を7問、休憩をはさんで約2時間話し合ってもらいました。なかには命の大切さや倫理観を問う問題もあり、普段使わない頭の筋肉を酷使した2時間だったようで、とある参加者からは「ものすごく頭を使いました」という感想をいただきました。普段は決して考えないようなことを考える有意義な時間になったのではないかと思います。
次回の開催は未定ですが、またいつか開催の際にはぜひご参加ください。
ちなみに、今回用意した思考実験のなかで、私が最も好きなものをひとつ紹介してこのレポートを終わりたいと思います。
「5億年ボタン」
あなたはある日、奇妙なアルバイトを紹介されます。
「このボタンを押すだけで、100万円が貰えるアルバイトです。」
そのボタンを押すと、何もない空間に飛ばされ、たった一人で5億年を過ごすことになります。その間はおなかも減らないし、眠くもなりません。常に意識はクリアで、病気になることも、死ぬこともありません。ただ何もない空間で1人、5億年生きるだけです。
5億年が経つと、その間の記憶がすべて消されて、体も記憶もボタンを押した直後に戻り、100万円を受け取れます。つまり、ボタンを押したらすぐに100万円が貰えたと感じることになるのです。
さて、あなたはこのボタン、押しますか?押しませんか?
A・・・ボタンを押す
B・・・ボタンを押さない
文責:「哲学の小部屋」 担当 川部拓哉










