2024年7月14日日曜日に開催されたイベント、「図書館の『いま』と『これから』―日本とベトナムの『いま』を出発点に―」に参加してきました。これは県立図書館(山形市生涯学習センター「遊学館」研修室)を会場に、NPO法人アジア教育友好協会(AEFA)と山形県青年国際交流機構(山形県IYEO)の共催、MSY在山形ベトナム人協会の協力で開催されたもので、日本とベトナムの図書館の現状を学び、図書館のありかたについて考えるというイベントです。話し合いを通じてさまざまな国の人達と交流できるという貴重な機会にもなりました。
前半は探検セッション。山形県立図書館の職員の方による図書館の使いかたなどの説明をお聞きし、その後グループに分かれて実際に県立図書館の中を見学させてもらいました。グループ分けは日本語、ベトナム語、英語と、各々参加者の話せる言語によって分けられます。それぞれ図書館内の検索機を実際に操作してみたり、蔵書の本を手に取って見たりしながらぐるりと図書館をまわっていました。
ここでいったん休憩となり、参加者はそれぞれ会場に展示してあるベトナムの少数民族の民族衣装や縁起物の絵などに見入っていました。展示物の中にはベトナムで出版されている日本の漫画なども並んでいて、興味をそそられる展示となっていました。また会場には七夕の笹が飾られていて、子どもたちが思い思いの願い事を短冊に書いて飾る光景も見受けられました。
休憩をはさんでそれぞれの団体からのあいさつの後、後半のワークショップセッションの始まりです。まずは自己紹介じゃんけん。参加者に3枚ずつシールが配られ、近くの人と一言ずつ自己紹介をしあい、その後じゃんけんをして勝ったほうがシールをもらうというゲームです。
ベトナム語でのじゃんけんの掛け声は「Oẳn tù tì」というもので、これは日本語での発音が「ワンツースリー」の発音とそっくり。あちこちから「ワンツーチー!」という掛け声が聞こえてきて、大人も子どもも日本人も外国人も入り乱れての大じゃんけん大会になりました。9枚のシールを集めた子が優勝で自己紹介じゃんけんは終了となり、会場が親密な空気に包まれた中で次は全員集合しての写真撮影。皆笑顔での記念写真となりました。
次にベトナムから来られたアインさんのお話を伺いました。アインさんはCSD(Children-School-Development)という団体の代表をされていて、ベトナムで少数民族のための図書館建設支援や、図書館の運営に携わる活動をしています。これはレインボーライブラリープロジェクトとよばれる活動で、2019年から数えて25館もの図書館が建設されたそうです。
ベトナムには54の民族がいて、そのうち一番多いキン族が86パーセント、その他の少数民族が14パーセントという構成で成り立っています。ベトナムがそんなにたくさんの民族で構成されているというのは驚きでした。多くの民族がいるおかげでベトナムの文化はとても多様で豊かなものである一方、少数民族の人々は遠隔地で大変な生活を送っているという現状があるのだそうです。今回主催団体の一つであるAEFAはそのような少数民族の支援を行っていて、なかでも図書館プロジェクトというものは支援の中でもとても大切な位置を占めているそうです。実際にベトナム北部の少数民族の子どもたちのために行っている図書館プロジェクトのようすを紹介していただきましたが、その様子は日本における図書館とはだいぶ違っていました。
アインさんたちが設立、支援した図書館にはそれぞれ名前とロゴをつけていて、それぞれ地域の図書や特徴に合わせてテーマを持った図書館になっているのだそうです。緑が多いのが特徴の地域ではそれをロゴマークにしたり、これから観光事業を主体に活動したいという地域の図書館はそれにちなんだ名前が付けられていたり。
地域や場所によってさまざまなかたちをとっている図書館ですが、その考えの中心には常に子どもたちがいて、その周りを囲むように家族があり、学校があり、社会があるという考えの上に立っているとのこと。レインボ-ライブラリープロジェクトでは、これらのすべての関係性の中で、関わるすべての対象を少しでもよりよいものに変えていこうと考えて活動を展開しているのだそうです。
ベトナムの少数民族の子どもたちもここに集まっている参加者も、本を愛するという気持ちは誰しも同じではないかというアインさんの言葉がとても印象に残りました。
セッション後半はグループに分かれてのワークショップ。大人のグループはそれぞれ日本語、ベトナム語、英語と言語に分かれてのグループ。子どもたちも年齢に合わせて2グループに分かれ、小さいお子さんがいる親御さんは読み聞かせのグループとなって、それぞれ40分程度話し合いが行われました。
話し合いのテーマとしては図書館や本にまつわること。あまり語学に自身がない私は日本語のみのグループにまぜてもらいました。話し合いのテーマとして選んだのは「こんな図書館があったらいいのに」。夜に開いている図書館や英語だけじゃなく多言語対応の図書館、料理ができるスペースがある図書館など、様々なアイデアが飛び出し、あっという間に時間が過ぎてしまいました。
図書館という施設を多角的に捉えて、しかもさまざまな人たちとの交流もできて、とても有意義な時間でした。
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山形県青年国際交流機構(山形県IYEO)
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