平成31年1月19日(土)、山形市社会福祉センター交流ホールにて、『「繋がる・伝わる・育ちあう」聴覚障害児の言葉と心を学ぶセミナーinやまがた 聴こえない・聴こえにくい子の「地域で暮らす」を考える』が行われました。主催したのは、「ゆずりはの会 ~やまがた~」です。

 「ゆずりはの会~やまがた~」は、聴こえにくい・聴こえない子どもとその家族を支援する市民活動団体です。平成27年から活動を開始し、現在、聴覚障害児の交流イベントや親同士が集まる勉強会などを定期的に開催しています。

 この事業は、平成30年度山形市コミュニティファンド公開プレゼンテーション補助で、補助対象として採択され実施されたものです。平成29年度は、「聴覚障害児の早期療育開始を実現するプロジェクト」を実施しましたが、この事業も山形市コミュニティファンド公開プレゼンテーションの補助の対象事業です。

▲平成29年度に製作された聴覚障害児の早期療育開始を促すためのリーフレット

 今年度は、地域の方に聴覚障害児にとっての「合理的配慮」とは何かを体感してもらうことを目的に、映画の上映、保護者や関係者による座談会や講演会を開催しました。

 セミナー当日、会場には、保護者や行政機関、教育機関、保育施設、民間支援施設の方など、聴覚障害児に関わる様々な立場の方が来場され、映画上映には約50名、講演会には約80名、座談会には約60名の方が参加されたそうです。

 第1部では、映画「ゆずり葉」が上映されました。この映画は、全日本ろうあ連盟の創立60周年記念として2009年に製作された映画です。全編手話でストーリーが進み、字幕付きで上映され、どなたでも楽しむことができました。参加者からは「聴覚障害の方の視点を初めて分かった。」「ゆずり葉の映画、感動した。来れる機会があって本当に良かったです。」などの感想をいただいたそうです。

 第2部では、講演会が行われました。講師は、東北福祉大学 教育学部 教育学科 大西孝志教授です。

 大西教授は、28年間の教育現場での経験をもとに、聴覚障害教育の専門性やその内容と今後の課題について研究されており、聴覚障害児を持つ保護者の皆さんからも厚い信頼を得ていらっしゃるそうです。

講演は、「聴覚障害児の言葉とこころを育てる」というテーマで行われ、現在、全国的には、地域の学校の中に難聴特別支援学級の設置が増加しているものの、山形県内では通常の学級で学ぶ子どもがいる現状の説明がありました。聴覚障害児の言葉を育てるためには、新しい言葉を覚える際に経験を伴うと言葉を結びつけやすいと話され、言葉を習得していくために、学校だけでなく家庭や地域で大人と一緒に様々な経験をし、子どもたちに丁寧な言葉がけをすることが重要とお話されました。参加者の皆さんは先生のお話から多くを吸収しようと熱心に聞き入っていました。

 第3部では、参加者が8つのグループに分かれ座談会を行い、今日の感想や学んだことなど意見を共有し合いました。「知るということは楽しいことだということを大切にして接していきたい」、「家庭でも言葉とともにその意味や概念も含めて身につけさせることが大切だと思った」などの意見が発表され、参加者の皆さんは子どもたちへの接し方や実践できることなどを、改めて考えておられた様子でした。

聴覚障害児の親の会が主催した、こうした学び合いや意見交換の場は、山形県内ではおそらくこれまでなかったそうです。代表の渡部さんにお話をお聞きしたところ、「大西教授に講演を引き受けていただき、先生のご協力があったからこそ多くの方に参加いただくことができました。感謝しています。これからも聴覚障害を持つ子どもたちに関わる方々が接する仕組み、仕掛けなど、設けられるようにしたいです。」と話してくださいました。

 今回のセミナーをきっかけに様々な立場の方が繋がり、情報を共有し合い、聴覚に障がいを持つ子どもたちが暮らす地域がより暮らしやすくようになっていくことを願っています。ゆずりはの会~やまがた~の皆さん、取材させていただき、ありがとうございました。

■ゆずりはの会~やまがた~(難聴児親の会)
代表 渡部祐子 さん
Eメール:yuzuriha.yamagata@gmail.com
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