令和7年11月22日土曜日、当センターの登録団体「山形霞城会 水野元宣に集う」と、社会人講談師の織(お)さゆさんが開催した「辻講談」に行ってきました。
「山形霞城会 水野元宣に集う」の代表は木原邦彦さんで、幕末から明治維新にかけて山形藩の首席家老だった水野三郎右衛門元宣を中心に、郷土の歴史を掘り下げていくことを目的に設立された団体です。設立は2025年9月ですが、それ以前から講談や郷土の歴史について市内の街道や霞城公園の案内、ミニ講座など、さまざまなイベントをおこなってきました。
この辻講談は、山形市の豊烈神社境内にある水野三郎右衛門元宣公の銅像前で、今年の4月より毎月1回開催されてきました。この辻講談を始めるきっかけは、織さゆさんの水野元宣への熱い想いからだったそうです。
普段はデザイナーを生業とされている織さゆさんですが、講談の魅力に触れて講談師・神田香織さんに師事。2019年に霞城公園で開かれた霞城観桜会にて元宣公の史実を元にした演目を初披露。水野家の子孫であり会の中心メンバーの水野幸子さんは、その会場で織さゆさんの講談を聴いて感激し、たくさんの人にこの講談を聴いてほしいと思い、活動を後押しするようになったそうです。その後織さゆさんは学校や公民館など、講談を通じて元宣公の功績を紹介するようになりました。
この辻講談の会場である豊烈神社に建つ元宣公像は、明治まで遡る長い歴史があります。明治34年、時の市長だった雄倉繁次郎をはじめとした45名の有志によって、後世に語り継がなければならない山形の大恩人として銅像が建てられました。初代の像は銅製だったため戦時下に供出され、その後昭和21年に地元の彫刻家、服部午山の手によりフランスから運んだ砂を使い、コンクリート製の塑像として再建されました。現在の像は三代目で、老朽化した像から型をとって2021年に造られたものです。このことからも、元宣公が古くから山形の人々に深く親しまれてきたことがよく分かります。

先述のとおり、この辻講談は今年4月から月1回開催されてきたのですが、5月の開催時には雨模様の天気で、直前まで開催中止も検討したそうです。それでも一人でも聞いてくれる人がいるならと開催に踏み切りました。そのときのようすが山形新聞に掲載され、さらに多くの人に知ってもらうきっかけとなり、いろんな場所で上演の機会を得ることになったそうです。
取材させていただいた日は雲一つない秋晴れで、今年最後の辻講談にはうってつけの日でした。織さゆさんは最初、開催当日の「いい夫婦の日」にちなんだ話で場を和ませていましたが、本編の講談「山形の幕末 若き侍 水野三郎右衛門の物語」が始まると雰囲気は一変。元宣公像が見守るなか、講談特有の張り扇が響き、張りつめた語り口で紡がれる元宣公の物語に、集まった観客は静かに聴き入っていました。維新の嵐の中、反逆罪に問われ、幼いわが子を遺して散った元宣公の悲愴な姿は聴く者の心に切々と迫り、織さゆさんの声はどこまでも澄み渡る青空へ静かに溶けていくようでした。かつて山形の町を救った若き侍の「責任」のとり方について、深く考えさせられた一席でした。

講演を終えた織さゆさんにお話を伺いました。これまでは出前講談を中心に活動していましたが、今年は自分から発信していこうと思い立ち、4月からの「辻講談」に挑みました。この水野三郎右衛門元宣公の創作講談が織さゆさんの第一作目の持ちネタ。2019年に観桜会で初披露した時は、もっとシンプルな話だったそうです。その後水野さんからお聞きしたエピソードなどを取り入れてバージョンアップを重ね、今のかたちになっていきました。山形の人は歴史に関心が深い方が多くいるようで、こうして辻講談で話していると、観客からこんなエピソードも話してほしいなどと言われることも多いのだとか。今年一年限りと思い、続けてきたこの辻講談ですが、来年以降も続けていければとお話しくださいました。また、来年は新たなレパートリーを増やしていきたいとのこと。それもまた山形の郷土に根差した講談を考えているとのことで、来年の織さゆさんの活動も楽しみにしたいです。
最後に改めて「山形霞城会 水野元宣に集う」について、水野さんにお話を伺いました。今年は会を発足させることで精いっぱいで、この講談と木原ガイド塾の2本立てで活動してきました。木原ガイド塾とは、山形の知られざる歴史について、会の代表である木原邦彦さんの解説を聞きながら山形の街並みを歩くというイベントです。歩く百科事典のような木原さんのお話を聞きながらの街歩きはまさに大人の遠足、参加者はまだまだ山形のことを知らないなあと、毎回驚かされるそうです。来年の活動についてはまだ未定だそうですが、辻講談と木原ガイド塾、皆さんも機会があればぜひ参加してみてはいかがでしょうか。

連絡先
山形霞城会 水野元宣に集う 事務局 023-643-7933









