特定非営利活動法人 山形わたげの会

 山形わたげの会は「できるだけ長く住み慣れた街で、家で暮らしたい」そんな願いをかなえるために「手助けを必要とする人」と「手助けができる人」とが共に支え合っていきたいという想いで活動してきました。
「お互いに助け合うことを基盤に置きつつ、多岐にわたる地域福祉活動を通して、新しい市民社会の構築を目指す」を理念として、助け合い事業、訪問介護事業、居宅介護支援事業に取り組んでいます。
 中でも、公的な福祉サービスでは対応できない社会的ニーズのあるサービスを提供する、制度にとらわれない「助け合い事業」は、わたげの会開設以来、社会に求められてきました。最近では、介護保険事業と補い合いながらの支援活動も増えているそうです。


 取材にうかがった日の11時、山形わたげの会では沢山の人が活動していました。「今から、配食サービスの配達があるのです」と理事長の神尾さん。今日は男性3人と、女性1人が元気に配達へと出かけられました。
 たすけあい事業の配食サービスはとても人気があるそうです。人気のヒミツは、冷凍やインスタントの食材などを使わずに配食スタッフの方が作る手作りのお弁当はもちろん、沢山の工夫があるから。


毎日届く「わたげの会弁当だより」もその一つです。「わたげの会弁当だより」は、スタッフの方がその日のお天気の話題、ご自分が感じたことなどを読みやすく手紙にまとめてあります。また、おたよりには、素敵なイラストと共に、献立、配食サービスにかかわった全スタッフの名前が書いてあります。お弁当包みもスタッフの手づくり、お弁当箱も見た目も楽しめるように、おいしさが伝わるように、使い捨てのものではありません。ただお弁当を届けるというだけではなく、みんなの気持ちが伝わってきます。調理場を覗かせていただくと、スタッフの方が、テキパキ、明るく作業していました。1日30食を週4回、食材揃えも献立もすべてスタッフの方が担当されています。配食サービスが人気な理由が納得です。


「みなさん楽しみながら、やりがいを感じて、社会貢献しているんです。高齢の会員の方でもいろんな形で助け合い活動ができるので、たくさんの会員の方に関わっていただいています。」と神尾さんはおっしゃいます。
利用会員さんの「ありがとう」が、協力会員さんにとってもいい効果になり、お互いがイキイキしてくるのだそうです。

山形わたげの会は、代表の神尾さんのお母さんに介護が必要となったことがきっかけで、子どもの問題や女性の生き方、親の介護などを話し合う仲間と平成7年に立ち上げ、平成11年9月に特定非営利活動法人となりました。NPO法人になろうと思ったのは、「NPO活動で市民が社会を変えていける」という可能性を感じたからだそうです。その後、口コミで協力してくれる方、利用してくれる方が集まりました。ふりかえってみると「人の輪がここまで育ててくれた」と思われるそうです。たくさんの会員を繋ぐのは「広報紙」。自分たちの活動の状況や想いを伝えるために大切だと考えていらっしゃいます。活動を始めるときも、自分たちを理解してもらうよう、手づくりのチラシを持って、様々な場所を訪ねていかれたそうです。法人登記、会計税務、運営等、わからない事は教えてもらいながら自分たちで行いました。「苦労してやることで、みんなの力になる」、その姿勢は今もかわりません。また、地域の方との交流のためバザーを開催したり、保健や福祉の団体とのネットワークの会を作ったり、社会全体に「人の輪」を広げていらっしゃいます。

自分が社会と関わる喜びが原動力。一緒に活動してきた人が高齢となり、今までの活動ができなくなったとしても、やれることを探して活動していきたい。やれる人、関われる人をもっと増やし、福祉有償運送のニーズにも応えていきたいと考えていらっしゃいます。

地域福祉の谷間を埋め、多様化するニーズに応え、生きがいをもった生活を誰もが送れる社会を作る。出会う課題に対して、「誰かが解決してくれる」ではなく、「自らが解決する」を気負うことなく自然体で形にしていらっしゃると感じました。