平成30年6月24日、山形市の国際交流プラザ山形ビッグウイングにて行われたNPO法人山形県腎友会が主催する、第16回定期大会特別記念講演「今、患者さんに知っていて欲しい透析のこと」を聴講してきました。

 NPO法人山形県腎友会は、山形県民に対して、腎臓病に関する正しい知識の普及および社会啓発、ならびに腎臓病患者の自立と社会参加の促進を図る事業を行うことで、山形県民の保健、医療及び福祉の増進に寄与することを目的に活動している県内最大規模の患者団体です。今年で創立43周年、法人化から16年目を迎えました。

 今回の定期大会特別講演は「現在の透析」がテーマの講演でした。「透析」とは、腎機能の低下により体に蓄積した余分な水分や塩分、老廃物を尿として体の外に排出する腎臓の機能を人工的に補助する治療法です。講師の伊東稔先生が勤務する山形市内の矢吹医院には260名程の透析患者の方がいらっしゃるそうです。

 講演の内容は、現在の透析は昔に比べどのように変わったのか、災害などの事態にどのように対処してきたのかを中心に進められました。

 透析患者の高齢化については、認知症や寝たきりなどが原因で安全に透析ができない、がんや老衰により循環が不安定になっている、また、透析が生活の負担になっているといった患者の方が増えているそうです。アメリカでは透析の中止や非導入の選択もあるそうですが、日本では倫理的な問題があり進められていないというのが現状とのことでした。

 災害と透析の話では、東日本大震災のような大きな災害が起こった時の状況と対応をお話しされました。透析に必要な水と電気の供給が途切れた時に、透析患者それぞれの程度に合わせ、県外への避難か、その場で対応するかを、医療機関で共有されているガイドラインに沿って対応しているのだそうです。

 新薬の開発や医療の技術が進歩しても、透析患者の自己管理が欠かせない疾患のため、医師からの一方的な医療ではなく、患者が選択する医療ができることや、患者と医師との正しい情報共有が大切とのこと。これらの高齢化の問題や災害時の対応についての話は透析患者以外でも知っておくべきものだと、とても考えさせられるものがありました。

 WHO憲章の中で健康とは、「病気であるかどうかにかかわらず、肉体的、精神的、社会的にすべてが満たされている」事だと定義されています。伊東先生は「透析を行っていることで選択を制限してはいけない」「常に正しい情報を患者さんに伝えていくことを心掛けている」とお話しされました。治療の概念や社会の情勢が日々変わっていく中で、それぞれの相手に合わせた適切なコミュニケーションが大切だと改めて実感することのできる内容の講演でした。

 

NPO法人山形県腎友会
代表者   志田 晃一
事務所   山形市城西町4-2-38
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