村山民俗学会
「談話室(ミニ研究会)」の様子
平成26年3月26日(水)13時から開催された村山民俗学会「談話室」におじゃましてきました。
村山民俗学会は、『山形県村山地方を中心とする民俗の調査研究の向上をはかる』ことを目的とし、昭和61年に発足した研究団体です。民俗学に関心のある有志の方々の設立から、28年の歴史を持ち、東北や全国の民俗学会に参加するなど多くの研究成果を残しています。年齢や立場、職業などを問わず様々な方が会員となっており、会員数は102名にのぼります。
年間の活動として、会員の研究発表の機会となる、研究発表会や談話室(ミニ研究会)、講師を招いた講演会を開催し、研鑽を積み知識習得の場を設けています。その他、会誌「村山民俗」や月刊会報誌「村山民俗学会」の発行、また村山地方の民俗に関する書籍を発行しており、村山地方を中心とした地域文化・習俗研究、普及に長年努めています。
この日の談話室(ミニ研究会)では、3名の方が順に発表しました。
はじめに発表した難波耕司さんは、ご自身の博士論文の序論でもある「研究史 出羽三山の神仏分離」を発表しました。維新直後の明治政府の宗教政策の一つ「神仏分離」に関する出羽三山の研究史をふまえて、研究者毎の考察の概要をまとめた内容でした。
次に、関口健さんが「法印様の近代化と地域社会-死者供養との関わりを中心に-」を発表し、上山市、村山市、鮭川村など多くの地域に残る”法印様”と呼ばれる『里修験』の暮らしなど、村山地方での存在背景や近代化による変遷、現在の地域社会とのかかわりなどについて説明しました。
最後に、山形県の板碑※に関する研究について加藤和徳さんが発表しました。現在県内に存在する1505基の板碑の分類や分布、年代別分類などの調査結果が示され、置賜地方周辺に存在する「厨子型」の板碑についても研究経過を発表しました。
※板碑・・・板石塔婆の事であり、お盆の施餓鬼に用いる板の卒塔婆で、永久的に利用できる石材を使用し、「仏」「板仏」「ばん碑」「青石塔婆」などと呼び、全国的に分布している
地域の方への聞き書き調査や地域に伝わる祭礼での調査など、どの発表者の方も長年、対象フィールドに寄り添い、人とのつながりの中で、綿密に研究を積み重ねておられる様子が伝わりました。また、フィールドワークだけではなく、地域に伝わる古資料を読み解き地方毎の分類を行った結果なども発表され、大変貴重な成果をお聞きすることができました。
代表の野口一雄さんにお話をお聞きしたところ、「民俗学は、暮らしの事柄を取り上げ、ひろく地域をフィールドとして学ぶ学問。暮らしの中で研究者自身が読み取ったものを後世に語り継ぐことが民俗学の使命ではないだろうか」と話してくださいました。この取材を通して、地域、また自分たちの身近な暮らしの中で、受け継がれている知恵、技、習俗、信仰、制度など、人の営みに関する様々な事柄が研究題材となり得ると知ることができました。
村山民俗学会には、長年県内の地域研究や教育分野に携わってこられた大学教授,元教員の方々が多数在籍しており、県内全域で研究成果を残し活躍されています。これからも質の高い研究をもとに多くの成果をぜひ残していただき、地域文化継承の要として、活動を継続していただきたいと思います。
村山民俗学会は、民俗研究の場として地域に開かれています。関心のある方ならどなたでも会員になることができます。刊行物や定期発表会などのお知らせは村山民俗学会のWEBサイトで確認できますので、ぜひご覧ください!
■お問い合わせ
村山民俗学会(代表 野口一雄)
〒990-0821 山形市北町3-3-45
事務局 市村幸夫
WEBサイト:http://www.geocities.jp/murayamaminzoku/