令和6年10月19日(土)文翔館議場ホールにて、骨髄バンクを支援するやまがたの会主催〝~あなたの想いが命をつなぐ~「いち逢い」でドナー倍増プロジェクト!〟が開催されました。このイベントは県内のNPO活動の活性化を目指し創設された「やまがた社会貢献基金」に採択された事業です。

 

 初めに、娘さんが急性リンパ性白血病を発症したことをきっかけに、母親である堀ともこ氏が企画した映画「いちばん逢いたいひと」の上映を行い、その後、堀氏、ドナー経験者、移植経験者によるトークセッション、最後に全国骨髄バンク推進連絡協議会公式アンバサダーの山本雅也氏によるミニコンサートを行うという盛沢山の内容でした。

 

「いちばん逢いたいひと」はある日突然急性骨髄性白血病と診断された11歳の女の子と白血病で娘を亡くした男を中心とした物語です。生きることの大切さ、生きることをあきらめない大切さ、今生きていることは決して当たり前ではないことを感じさせられる作品でした。

 

 上映後のトークセッションは、映画プロデューサーでドナー経験者の堀氏、日本で初めてドナーの為の保険を導入したプルデンシャル生命保険株式会社支社長でドナー経験者の田中宏治氏、18歳で多発性骨髄腫を発症し、その後弟さんから造血幹細胞移植を受け寛解した布施諒氏、中学生の時兄が余命2年と告知され、ドナーとなった布施駿氏の4名で行われました。

 

 ここで簡単に骨髄バンクについて説明します。白血病をはじめとする血液疾患のための骨髄移植、造血幹細胞移植が必要な患者さんと、それを提供するドナーをつなぐ機関が骨髄バンクです。
 提供方法は大きく2つに分けられ、全身麻酔をかけ、腰の骨から骨髄液を吸引する骨髄提供と、投薬で白血球を増やし献血と同じ方法で採取する末梢血幹細胞提供があります。末梢血幹細胞提供は献血と同じく腕に注射する方法で布施兄弟が行ったのがこの方法です。

 毎年約2,000人がドナーによる移植を望んでいますが実際に移植を受けられる患者さんは半数程にとどまっているそうです。移植が受けられない一番の原因は移植に必要な条件である白血球の型が適合するドナーが中々見つからないことです。兄弟姉妹間なら4人に1人、親子間ではまれにしか一致せず、血縁関係がなければ数百人から数万人に1人しか適合しないそうです。しかし少子化が進んでいる現在、兄弟姉妹がいないという人は珍しくありません。更にドナーとなれる年齢は55歳までで、このままでは10年以内にドナー登録者が半分以下になる可能性もある危機的状況です。

 

 プロデューサーの堀氏は娘さんの闘病を通し、とにかく1人でも多くの人に骨髄バンクの存在を知ってもらいたいと感じ、より多くの人に知ってもらうにはエンタメの力が効果的なのではと考え映画を作ることを思いついたそうです。

 ドナー経験者の田中氏は患者さんと家族から貰った手紙について話してくださいました。ドナーと患者さんはそれぞれ個人を特定できるような情報は与えられませんが、おおよその情報と最大2往復の手紙のやり取りが可能だそうです。患者さんは中学生の男の子だったそうですが、骨髄提供手術前に男の子のお母さんから手紙を貰ったそうです。便箋3枚ほどの手紙の中には「ありがとう」という言葉が数えきれないくらい綴ってあったそうです。患者さんの手術後、今度はお母さんと男の子二人から手紙が届き、そこには感謝の言葉と、卓球を始めた事、救って貰った命を大切に将来社会貢献できるような大人になりたいと書いてあり、自分の命で他の人の命を助けることが出来たんだと実感したそうです。

 布施諒氏は高校3年の時多発性骨髄腫を発症したわけですが、最初の何か月かは病名がわからないまま検査入院をしていたそうです。その後セカンドオピニオンを受け、血液の病気らしい事が判明、親族にドナー検査を受けてもらったところ、幸運にも弟の駿氏がドナーになれることが判明したそうです。駿氏は当時中学生だったわけですが、もし、自分がもう少し年が下だったらドナーになれなかった、本当に運が良かった。ドナーは誰でもヒーローになる事ができるチャンスですと話されていました。

 1人でも多くの人にドナー登録して欲しい。そんな想いからこのイベントは開催され、今回トークセッションに参加いただいた4人も少しでも骨髄バンクの普及に貢献したいという切実な想いを持っていました。

 堀氏や布施兄弟曰く、ドナーによる移植手術を受け寛解した患者さんやその家族の中にはドナーが見つからなかった人、助からなかった人、またその家族に対して後ろめたい気持ちになる人が少なくないそうです。骨髄バンクのドナーを待っている患者さんの中にはその方法でしか生きられない人が多くいる。しかし、現状約半数の人しか手術を受けられない。より多くの人に骨髄バンクに登録してもらい、患者さん全員にドナーが見つかり同じスタートラインに立てるような環境になって欲しいと語っておられました。

 最後に山本氏が生歌を披露くださり余韻に浸る中イベントは終了しました。

 

 今回のイベントの運営に携わった皆さんの想いとしては「良い話が聞けたな」で終わるのではなく、実際に骨髄バンクにに登録してくださる事を願っているそうです。山形市近郊にお住まいであれば山形駅前の献血ルームSAKURAMBOでいつでもドナー登録が出来ます。約2mLの採血で登録可能です。


「いちばん逢いたいひと」は各配信サイトやDVDで鑑賞可能です。ご興味があればご覧いただき、命について考えてもらえればと思います。

 

【お問い合わせ先】骨髄バンクを支援するやまがたの会  
TEL:023-632-7016
https://kotuzuibankyamagata.wixsite.com/website-1